印刷及び印刷物についてです。プレスやコピーをした後配布する場合、メディアのみの裸の状態はまずないでしょう。通常は盤面(またはレーベル以下盤面)に印刷をしたり、ケースにセットしたり、印刷物を同封したりします。
まず、盤面印刷についてですが、いくつか種類があります。印刷の方式によって仕上がりも違ってきますし、それぞれコストも異なります。またプレスとコピーで選択可能な印刷方法が異なります。
ではどんな印刷があるのかみていきましょう。
インクジェット印刷・・・コピーで選択可能
これは家庭用プリンタで代表的な印刷方式で、盤面プリントのできるプリンタも出回っていますので、みなさんも仕上がり具合についてはご存知でしょう。
業務用の高解像度で印刷できる専用機で行いますが、基本的な仕上がり具合は、同様です。水分や摩擦に弱い面があり、長期間使われる場合や頻繁に使われる場合には向いていません。一般的には大量複製のプレスで採用されることはなく、コピーで採用されることがほとんどです。
制限されるデザイン等は特にありませんが、デザインによって仕上がり具合が変わる可能性が あります。
例えば、黒や淡い色のベタ塗り、グラデーションなどです。
イメージしている仕上がり具合が気になる方は発注する前に仕上がり具合の確認をお勧めします。
あくまで確認なのでその通りには仕上がらない可能性はあります。ですが、確認しないよりはいいかと思います。また、小さいフォントサイズでの白抜き文字なども滲んでしまう可能性があります。
色味も安定させての印刷が難しいため、追加の場合など同じデータから印刷を行ったとしても色味が異なる場合があります。
印刷品質をどの程度こだわるかにもよりますが、販売目的などで印刷品質にこだわりたい場合は、他の印刷方式を検討したほうがよいです。コストは他の印刷方式と比べると大量では割高、少量では割安となります。
写真高画質印刷(またはサーマル印刷)・・・コピーで選択可能
熱転写方式の印刷です。コピーでの印刷方式としてはもっとも高画質な印刷方式です。
特定の盤面印刷機にて専用メディアを使用することにより水に強く、インクジェット印刷よりも高品質に仕上がります。使用色数が多かったり、写真を使用したりしているデザインに適しています。
また品質にこだわる方にもお勧めです。デメリットとして、専用メディアを使用したりするため、インクジェット印刷より割高となります。
ウォーターシールド…コピーのみで選択可能
インクジェット印刷方式となります。専用メディアを使用することによって水に強い光沢のあるものに仕上げることが可能です。通常のインクジェット印刷よりも色味を安定して印刷することが出来ます。ただ、専用メディアを使用するので割高となります。
シルク印刷・・・プレスで選択可能
比較的単純なデザインやベタ塗りのデザインで採用され、高品質な仕上がりとなりますが、少量の場合には高コストとなるため大量のプレスで選択されます。あえて特殊な効果を狙う場合を除き、グラデーションや画像などの印刷には向いていません。
下地を入れて 1~3 色を使うのが一般的で、国内のプレスでは DIC、海外のプレスでは Pantone の色指定が必要となります。通常下地を指定されない場合は銀面となります。
オフセット印刷・・・プレスで選択可能
一般的な印刷方式です。シルク印刷と同様、プレスの場合に選択されます。シルク印刷と異なり、画像やグラデーションもきれいに印刷でき、オールマイティな印刷方法です。ベタ塗りの質感は シルク印刷より若干劣ります。色数に関係なく印刷することが可能です。
次にジャケット類の印刷についてですが、次のような印刷方法が選択できます。
オフセット印刷
盤面と同様に大量の場合はこれが選択されます。どんなデザインでも対応可能で、高画質に仕上がります。ただベタ塗りの場合、色ムラが生じる可能性があります。小枚数でも発注は可能です。高品質に仕上がるため、主に商用印刷で使用されています。
■ オンデマンド印刷
オフセットより若干品質が劣りますが、ほとんど見た目上の違いはありません。オフセット印刷では高コストとなってしまうような少量の印刷の場合に選択されます。オフセット印刷とレーザー印刷の中間あたりの印刷方式となります。レーザー印刷よりは高画質に仕上げることが出来ます。
オフセット印刷に出すほどの枚数はないが、高画質に仕上げたい場合にはこちらを選択してください。デメリットとしてレーザー印刷よりは割高となります。
レーザー印刷
コピーの場合のジャケット印刷で使われています。
特に指定ない場合はレーザーでの印刷となります。どんなデザインでも印刷は可能ですが、オフセットと違い、注意が必要となります。
盤面印刷のインクジェットより繊細なため、黒塗りや淡い色を使用してのベタ塗り、淡い色でのグラデーションなどが苦手です。小さいフォントでの印刷も苦手としています。
また、印刷時期によって同じデザインのものを印刷したとしても同じように印刷できるとは限りません。デザインをされる際に気をつけて作成された方がよいでしょう。デザインによっては家庭用のインクジェットプリンタで出力した方がキレイに出る場合もあります。品質を気にする方は他の印刷方式の検討もお勧めします。
次に盤面やジャケットの印刷デザインに関して注意しておくべきポイントをお伝えしようと思います。デザインを作成する場合、印刷方法によっていくつか注意しておかなければならない点があります。
まず、インクジェット印刷を予定している場合には次のことに気をつけましょう。
原則として広範囲のベタ塗りのデザインは避けたほうがよいです。
特に黒のベタ塗りは、仕上がりが悪くなる場合があります。スジが目立ったりしてあまりきれいに仕上がりません。
これは、インクジェット印刷の場合にはどんなよい印刷機を使っても避けることができません。それを踏まえた上でどうしても広範囲のベタ塗りのデザインにしたい場合には、その他の印刷方式を検討することをお勧めします。
もう一点は、小さいフォントの中抜き文字の使用です。文字の輪郭を濃い色にして中を白にするという文字装飾はよく使われますが、これを小さいフォントサイズでしてしまうとインクジェット印刷の場合きれいに仕上がりません。
周りの輪郭の色が中の白い部分ににじんでしまうことがよくあり、文字がよく判別できなくなってしまうことがあります。
シルク印刷を予定している場合に注意することしては、グラデーションや画像は使用しないということです。
原則としてベタ塗りやシンプルな文字列の単純なデザインになるようにします。特殊な効果を狙ってあえてグラデーションや画像のデザインでシルク印刷をすることもありますが、そうでないならば避けた方がよいでしょう。
デザイン制作上制限が少ないのがオフセット印刷です。印刷方式のことは気にせず自由にデザインしたい場合には、オフセット印刷を選んでおけば問題ありません。ただ、制作仕様・予算等でオフセット印刷を選べない時のために上記のような注意点が必要です。
デザイン制作に関わる注意点として代表的なものをまとめると以下のようなことです。
デザイン提出用のファイルの有無の確認
盤面やジャケットのデザインを制作する場合にはテンプレートのファイルが準備されているかどうか確認しましょう。通常、プレス・コピーサービスを提供している会社では盤面やジャケットのデザイン提出用のテンプレートファイルを準備していることがほとんどです。
テンプレートが準備されている場合には、その中にデザインを入れ込みます。また、デザインを作成する際、ソフトの指定・ソフトのバージョン指定がされている場合もありますので、制作前に確認しておきましょう。
文字はアウトライン化する
これをしないとデザインデータを開いた PC に該当のフォントが無い場合、代用のフォントが適用されてしまい本来のデザインで指定したフォントと異なってしまいます。そのため、本来デザインしたデータ通りの印刷ができなくなってしまいます。
そのような問題を避けるために、文字はすべてアウトライン化し、PC にインストールされているフォントに依存しないようデータを作成します。
入稿するデザインデータには必須の作業となっています。
画像の埋め込み、リンクを確認する
画像を使用している場合そのデータを埋め込みまたはリンクにしているかと思います。データ量が軽いものでしたら埋め込みでもかまいませんが、重いようでしたらリンクをおすすめいたします。
デザインデータを開いた際に埋め込み失敗やリンク切れを確認しましよう。
オーバープリントのチェックははずす ※Illustratorの属性パレットにてご確認できます。
ここがチェックされていると色が重なっている部分について Illustrator の画面上の色と実際に印刷される色が異なってしまいます。ほとんどの場合、外れていることが多いのであまり気にする必要はありません。
アタリケイ(印刷可能範囲の枠線)は提出時に削除する
アタリケイが実線で残っていると印刷されてしまいます。提出前に削除してください。
その他、印刷に関する注意点はプレス・コピーサービス会社により異なります。一般的には印刷デザイン作成に関する注意事項等のドキュメントが用意されていますのでそれらを参照するようにしてください。
デザインデータが完成したら提出となるわけですが、提出の際には出力サンプル(デザインデータを印刷したもの)を同時に求められる場合がほとんどです。
これは、何らかの理由で色が入れ替わってそのまま印刷されるのを防止するための確認用です。
後は校正が必要かどうかですが、校正をする場合には、一般的に納期がその分長くなり、通常別料金が発生します。